路地に入り、ひとつの扉を開け中に入る。そこはバーである。店内の右側に沿うカウンターの一番奥、そこには作家・太宰治があぐらをかいて座っている。写真家の林忠彦は、膝をついてしゃがみ、作家を見上げるアングルでシャッターを押した。1946年「RUPIN」でのこと。(作家は、右手にタバコを持っているが、酒のグラスが見えない?)
この店の常連はそのほか、泉鏡花、菊池寛、直木三十五、坂口安吾、遠藤周作、開口健、秋山庄太郎など。昭和の時代を元気にした作家たち。
場所はたぶん、時間を記憶している。その場へ行くと、感覚は時間を遡り、かつてそこにいた人と会える。この日はまだ昼間だったが、地図を手に「RUPIN 」の看板を探す、中年のご夫妻がいた。いったい誰に会いにきたのだろうか。