パナソニック汐留美術館では、2022年1月15日(土)~3月21日(月・祝)までの期間、「未来へつなぐ陶芸 伝統工芸のチカラ展」が開催されています。1月14日にプレス内覧会が開催されましたので、その様子をお伝えいたします。
優れた伝統工芸、伝統芸術に通じる共通点。それは、時代の風を受け入れ、歳月とともに進化していくということです。
日本の誇る工芸技術である「陶芸」は、時代とともに技法や表現が多様化し、著しく進化を遂げてきました。
1950年に発足した日本工芸会はさまざまな分野の工芸技術の保存と活用を目的にした組織で、重要無形文化財保持者(人間国宝)を中心に「日本伝統工芸展」にて作品を発表。
1973年には同会陶芸部の作家による「第1回新作陶芸展」が開催され、現在に至っています。
これまで「工芸・デザイン」をテーマにした展覧会を多く開催してきたパナソニック汐留美術館。「未来へつなぐ陶芸 伝統工芸のチカラ展」では現代陶芸の「今」に焦点を当て、陶芸部会所属作家を中心に、さらにそれ以外の作家の作品を含めた名品約140点を展示します。
伝統工芸の技と美が冴えわたる。
本展に出品された近現代工芸作家は137名。歴代の人間国宝作品をはじめ、窯業地ならではの素材と伝統を受け継いだ作家らによる作品、茶の湯のうつわなど、日本の伝統工芸の精髄と呼ぶべき珠玉の作品が集められています。
第一章では初の重要無形文化財保持者となった荒川豊蔵など、日本工芸会初期に活躍した作家たちとその活動を紹介。続く第二章では産地と表現に着目し、日本各地の窯業地出身の作家らによる意欲的な作品を展覧。伝統工芸の多彩な技と美の広がりを堪能できる内容となっています。
「伝統工芸」というとどこか堅苦しいイメージがありますが、本章で出品されている作品の色彩の大胆さ、フォルムの斬新さは現代芸術と見まごうばかり。作家たちが郷土の伝統技法を取り入れつつも、常に革新的な表現を生み出すべく試行錯誤していた様子がうかがえます。
若手作家の作品に見る「現代陶芸の今」
また、いわゆる「巨匠」のみならず新進気鋭の若手作家たちの作品に多く触れることができるのも本展の大きな特徴です。
第三章では伝統的な技法を継承しつつ現代という時代を意識して作品作りに励む57名の作品が集結。
未来を担う若手作家たちの作品に触れることで、現代陶芸の「今」、そして「未来」の姿を展望することができる内容となっています。
展示作品解説
《瀬戸黒茶垸》 荒川豊蔵 1959年 愛知県陶磁美術館
瀬戸黒(せとぐろ)は安土桃山時代に美濃で焼かれた施釉陶器の一種。作者の荒川豊蔵は志野焼と瀬戸黒茶碗において重要無形文化財保持者となった作家です。
荒川氏は桃山時代の瀬戸黒を「すっきりとした切立型が多く、いかにも桃井時代らしい強さ」と語りますが、この茶碗にはそうした華やかさ、強さのみならず、どこか柔らかな物腰や精神性も感じられるように思います。
黒、黒、黒・・・。その深い色合いからははるか彼方の宇宙を連想させます。
《鉢「紅白鮮斜陽-1907-」》 増原嘉央理 2019年
赤、黒、白の無数の線が織りなす抽象的な模様と美しく立ち上がった造形に目を奪われます。
第66回日本伝統工芸展日本工芸会新人賞受賞作。もともとは焼成後黒くなるように成型し、そののち表面に白い化粧土をかけ、それをそぎ落として模様とし、さらに赤い絵付けを施すことでこうした模様を作り出しています。
その独特の存在感は展覧会場の中でも一際輝いて見えました。
《緋彩長方皿「彗Ⅱ」》 神崎秀策 2020年
個人的なイチオシはこちらの作品。信楽焼の技法を用いて制作された作品ということですが、タイトル通りまるで彗星のように白く輝く軌跡が緋色のグラデーションの中に「抜けて」いくデザインが秀逸です。
どっしりとして厚みがありながらもエッジが効いてシャープな造形も素晴らしい。
まさに伝統と革新の両立を象徴したような作品です。
開催概要
会期 | 2022年1月15日(土)~3月21日(月・祝) |
会場 | パナソニック汐留美術館 |
開館時間 | 午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで) ※2月4日(金)、3月4日(金)は夜間開館を実施致します。 午後8時まで開館(ご入館は午後7時30分まで)※日時予約制 |
休室日 | 水曜日 ただし2月23日は開館 |
観覧料 | 一般:1,000円、65歳以上:900円、大学生:700円、中・高校生:500円、小学生以下:無料 ※障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料でご入館いただけます。 |
主催 | パナソニック汐留美術館、公益社団法人日本工芸会、NHKプロモーション |
公式ページ | https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/22/220115/index.html |