【三菱一号館美術館】「ルドン―秘密の花園」展、開催決定

《キャリバンの眠り》1895-1900年 油彩/カンヴァス オルセー美術館蔵
Paris, musée d’Orsay legs de Mme Arï en exécution des volontés de son mari, fils de l’artiste, 1984
Photo ©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Christian Jean / distributed by AMF

 
三菱一号館美術館では、2018年2月8日(木)~5月20日(日)まで「ルドン―秘密の花園」展が開催されます。
 
オディロン・ルドン(1840-1916年)は、印象派の画家たちと同世代でありながら、幻想的な内面世界に目を向け、その特異な画業は、今も世界中の人の心を魅了して止みません。なかでも本展は植物に焦点をあてた、前例のない展覧会となります。
 

3つの見どころ

  1. 最大級のパステル画《グラン・ブーケ》とともにドムシー男爵家の食堂を飾ったオルセー美術館所蔵の15点が一堂に揃います。
  2. ルドンが描いた花や植物に焦点を当てた世界で初めての展覧会。
  3. オルセー美術館、ニューヨーク近代美術館MoMAをはじめとする、世界各地の美術館からルドンの作品が集結。

ルドンの「黒」

《スペインにて》1865年 エッチング/紙 シカゴ美術館蔵 The Art Institute of Chicago, The Stickney Collection, 1920.1552

《スペインにて》1865年 エッチング/紙 シカゴ美術館蔵 The Art Institute of Chicago, The Stickney Collection, 1920.1552

ルドンが生まれたのは1840年、印象派の巨匠クロード・モネ(1840-1926)、近代彫刻の巨匠オーギュスト・ロダン(1840-1917)、そして自然主義の文筆家エミール・ゾラ(1840-1902)と同い年です。
 
1840年フランス南西部の港町ボルドーに生まれたルドンは、郊外のペイルルバードにあったブドウ園の屋敷に送られ、ここを管理していた親戚の老人に11歳になるまで育てられます。

その後、学業のためにようやくボルドーに戻ります。両親はルドンの画才を伸ばすために、地元の風景画家スタニスラス・ゴラン(1824-1921)のもとに通わせました。
 
家族はルドンが建築家になることを望みますが、ルドンはパリの国立美術学校の入学試験に失敗。その後、歴史画家のジェロームに師事しますが、師の教育方針と全く合わずに挫折、ボルドーに帰ってしまいます。
 
ちょうどボルドーに、放浪の版画家ロドルフ・ブレスダン(1822-1885)が滞在しており、ロマン主義の作家たちから高く評価されていたこの特異な版画家から、ルドンはエッチングを中心とする銅版画の技法を学びました。後にルドンは、木炭画や版画の白黒作品を、愛着を込めてわたしの「黒」と呼ぶようになります。



ブレスダンはルドンの画業に大きな影響を与えました。

《『起源』II. おそらく花の中に最初の視覚が試みられた》1883年 リトグラフ/紙(シーヌ・アプリケ)岐阜県美術館蔵

《『起源』II. おそらく花の中に最初の視覚が試みられた》1883年 リトグラフ/紙(シーヌ・アプリケ)岐阜県美術館蔵

『「夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出に)』 VI. 日の光;Songes (A la mémoire de mon ami Armand Clavaud), VI. Le jour

『「夢想(わが友アルマン・クラヴォーの思い出に)』 VI. 日の光;Songes (A la mémoire de mon ami Armand Clavaud), VI. Le jour

ルドンが描いた人間の頭部を持つ植物は、ボルドーの在野の植物学者アルマン・クラヴォー(1828-1890)の影響が指摘されています。クラヴォーは若き日のルドンをボードレール、ポーをはじめとする同時代文学に導き、スピノサやインド哲学を愛好していました。東洋の仏教を含む幅広い世界にルドンが関心を抱くようになったのはクラヴォーの影響によります。
 
ルドンの言葉によれば、クラヴォーは「一日のうち数時間だけ光線の働きによって動物として生きる神秘的な」植物の研究をしていました。不遇な人生を送ったクラヴォーは1890年に自殺しましたが、ルドンはその死の翌年に80部が発行された石版画集『夢想』を、年上の友人に捧げました。


色彩への移行

初の版画集『夢のなかで』の刊行が1879年、ルドン39歳の時でした。これを機に1880年代のルドンは、 世間から「黒」の画家として認知されます。しかしながら、1894年に初の大個展を開催した際には油彩9点、パステル10点を発表し、その後はパステル、次いで油絵の制作比率が高まっていきました。やがて「黒」は完全を姿に消すものの、植物のモティーフは変わることなく描いていました。

《ペイルルバードのポプラ》制作年不詳 油彩/厚紙(板に貼付) 岐阜県美術館蔵

《ペイルルバードのポプラ》制作年不詳 油彩/厚紙(板に貼付) 岐阜県美術館蔵

《メドックの秋》1897年頃 油彩/カンヴァス ボルドー美術館(オルセーより寄託) ©Musée des Beaux-Arts, ville de Bordeaux. Photo F. Deval

《メドックの秋》1897年頃 油彩/カンヴァス ボルドー美術館(オルセーより寄託) ©Musée des Beaux-Arts, ville de Bordeaux. Photo F. Deval

《眼をとじて》1900年以降 油彩/カンヴァス 岐阜県美術館蔵

《眼をとじて》1900年以降 油彩/カンヴァス 岐阜県美術館蔵

《神秘的な対話》1896年頃 油彩/カンヴァス 岐阜県美術館蔵

《神秘的な対話》1896年頃 油彩/カンヴァス 岐阜県美術館蔵

《蝶と花》1910-1914年 水彩(木炭?)/紙 プティ・パレ美術館蔵 ©Petit Palais / Roger-Viollet

《蝶と花》1910-1914年 水彩(木炭?)/紙 プティ・パレ美術館蔵 ©Petit Palais / Roger-Viollet


 
 
 
《蝶》1910年頃 油彩/カンヴァス ニューヨーク近代美術館(MoMA)蔵 The Museum of Modern Art, New York. Gift of The Ian Woodner Family Collection, 2000 ©2017 Digital image, The Museum of Modern Art, New York/ Scala, Florence

《蝶》1910年頃 油彩/カンヴァス ニューヨーク近代美術館(MoMA)蔵 The Museum of Modern Art, New York. Gift of The Ian Woodner Family Collection, 2000 ©2017 Digital image, The Museum of Modern Art, New York/ Scala, Florence


ドムシー男爵の食堂装飾《グラン・ブーケ》

《グラン・ブーケ(大きな花束)》1901年 パステル/カンヴァス 三菱一号館美術館蔵

《グラン・ブーケ(大きな花束)》1901年 パステル/カンヴァス 三菱一号館美術館蔵

《グラン・ブーケ(大きな花束)》は、ロベール・ド・ドムシー男爵(1862-1946)の城館を飾った16点の装飾画のうちの1点です。
 
《グラン・ブーケ》は、その壮麗さという点において、際だっており、ドムシー男爵城館の装飾画の中で、そしてルドンの装飾壁画作品全体を通しても、最も重要な作品の一つと言っても過言ではありません。


ルドンの絵には曖昧な部分がみられ、鑑賞者には多様な解釈が許されています。幻想的な内面世界に目を向けるルドンの芸術を、是非お楽しみください。
 

開催概要

展覧会名 「ルドン―秘密の花園」展
会期 2018年2月8日(木)~5月20日(日)
開館時間 10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21:00まで)
休館日 月曜日(但し、祝日の場合、5/14とトークフリーデーの2/26、3/26は開館)
お問合せ 03-5777-8600 (ハローダイヤル)
公式サイト 展覧会サイト:http://mimt.jp/redon

美術館サイト:http://mimt.jp/

料金 【当日券】
一般 1,700円/高校・大学生 1,000円/小・中学生 500円

【前売券】
一般 1,500円

 

教育普及プログラム

各プログラムの詳細・申込方法は、http://mimt.jp/event/をご覧ください。
(確定次第、随時更新予定)
 
■展覧会を語る 「ルドン─秘密の花園」

日時 2018年2月14日(水) 14:00~15:30(受付開始13:30)
講師 安井裕雄(三菱一号館美術館 学芸グループ 副グループ長、本展担当学芸員)
参加費 無料
会場 コンファレンススクエア エムプラス「サクセス」
千代田区丸の内 2-5-2

 
■ルドン展 記念シンポジウム

日時 2018年5月12日(土)開催時間未定
会場 日仏会館ホール
渋谷区恵比寿 3-9-25
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