2018年2月26日(月)〜3月11日(日)の期間、銀座のショップ14店舗とチーズメーカー4社がコラボレーションした「とかちーずまつり」が開催されています。
各店のシェフが選りすぐりのチーズを選び、オリジナル料理を提供している本イベント。今回はイタリア料理店「リストランテ・エッフェ」が提供する料理二品を取材いたしました。イタリアンの鬼才とも称される小林幸司シェフにお話を伺い、お料理をご紹介いただいたほか、フェアに参加した理由を語っていただきました。
提供する料理はすべて”前菜”
⇒ まず始めに、こちらのお店の特徴やコンセプトをお教えいただけますか?
最近の外食って、子供がいい状況で食事を提供されていないのかな、と考えているんです。よほど金額を出さないとちゃんとしたものが出てこなかったり、そもそも子供が入れる店なのか、という問題があったり。だから、安心して子供を連れてくることができる店を作りたいんです。子供にとって、日常ではないハレの雰囲気があって、それなりの食事ができる。でも、そんなに大変な思いをする必要がない。これが当店のコンセプトですね。うちは0歳から入っていただけるし、何がアレルギーか、どんなものが好きかを伺ってから、料理を出します。
⇒ ありがとうございます。それでは早速、今回のフェアで提供される二品をご紹介いただけますでしょうか。
うちの料理はすべてアンティパスト、つまり前菜として提供しているんです。どの料理も、好きなタイミングで食べていい。例えば、ココナッツのババロアに木苺のソースをかけた料理にしたって、食後に食べればデザートですが、前菜としてお腹をすっきりさせるために食べることもできる。その人のシチュエーションに合わせて、皿を選んでくれればいいんです。
今回の二品も、この季節の食材とチーズでどんなアンティパストが作れるかと考えました。「生ハムで巻いた茸の煮込みとモッツァレラチーズのビニエ」は、軽く火を入れた茸をチーズで繋いで、それを生ハムで巻いて油で揚げています。揚げるというのは、最も短い時間で水気を排出する手段です。揚げることによりモッツァレラのクリーミーさを出し、さらに香りを立てています。生ハムで塩味を加え、香りが口の中へ広がるように茸を足して咀嚼感を出しています。これなら、食前に食べれば食欲が増すような香りや塩気を持っているし、ちょっと強めの酒を呑んでも香りが活きてくる。食中で食べても料理と料理を繋ぐポテンシャルを持っているし、パスタの代わりに食べて長めの前菜にしてもらって、いきなりメインディッシュへ移ってもいい。メインディッシュを食べるお腹の隙間はないけど、少し肉が欲しい時にも食べられるし、最後のシメにグラッパと一緒につまむこともできます。
⇒ 「カチョカバロとナッツをはさんだラディッキオロッソのオーブン焼」はどのようなお料理でしょうか?
ラディッキオロッソというのは、熟成させた野菜なんです。もともとは2mくらいでできる野菜で、それを昔は馬の飼葉の中に埋めて熟成させていた。すると周りが腐敗していって、20cmくらい残った部分を加熱して食べる。
今回の料理では、カチョカバロをラディッキオロッソの間にミルフィーユ状に挟んで加熱しています。これによってラディッキオロッソの苦みとカチョカバロの苦みがシンクロしつつ、クリーミーで深みのある香りを持ったラディッキオロッソになっています。これなら肉の付け合わせにもできるし、香りが高いので前菜としても食べられる。もちろん食後にも食べられます。
自信を持って日本らしいチーズを作ってほしい
日本のチーズで残念なのは、瓜二つの”外国のチーズ”を作ろうとしてしまっていることなんです。イタリア語でチーズは「フォルマッジョ」と言うんですが、「フォルマ」は「形」の意味。つまりチーズには様々な形があって、作り手の数だけチーズはある、ということなんです。チーズって、原乳と製法と製造地域でほとんど決まっちゃうわけですよね。日照時間や気温、湿度、草、水牛などの条件が揃ってこそ、その地域特有のチーズができる。日本が海外の真似をしても、全く同じチーズを作ることはできないんです。でも日本にはかつて「醍醐(だいご)」というチーズがあったくらいだし、知識とスキルは持っているはずです。だから、自分たちの草と動物と知識を活かして、自信を持って日本らしいチーズを作ってほしい。
このフェアに参加しておきながら何を言ってるんだって話になるんだけど(笑)。でも日本のチーズに課題があるからこそ、フェアに参加する意義がある。今回の料理を多くの人が食べて、チーズに興味を持ってもらえれば、「日本のチーズは海外のものとは違うけど美味しい」ということを知ってもらえる。それに、今回提供する二品は、家庭でも真似しやすい料理を選んでいます。揚げるだけだし、葉っぱに挟むだけですから。ラディッキオロッソも最近はスーパーに置いてあるし、別の野菜でもいい。そのままじゃ食べにくい野菜、例えばカブの葉っぱとかホウレンソウとかを焼いて、香ばしくなったところにチーズを入れてもらえれば、絶対に美味しいんです。そうやって裾野が広がっていけば、日本のチーズがどんどんいい状況になっていくと思っています。
・とかちーずまつり開催概要
期間 | 2018年2月26日(月)~3月11日(日) |
店舗 | ■銀座ベルビア館
■銀座トレシャス
■ギンザ・グラッセ
■ニッタビル
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URL | https://mitsui-shopping-park.com/urban/special/18-019/18-019.pdf
※各店舗のお料理についてはHPをご覧ください。 |
・Ristorante F effe(リストランテ エッフェ)
所在地 | 東京都中央区銀座2-4-6 銀座ベルビア館8F |
受付時間 | 12:00-14:30(L.O 13:30) 17:30-22:00(L.O 21:00) |
定休日 | 不定休 |
問合せ | 03-6228-6206 |
URL | http://www.ristoranteeffe.jp/ |