【パナソニック汐留ミュージアム】「河井寛次郎ー過去が咲いてゐる今、未来の蕾で一杯な今」内覧会レポート

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パナソニック汐留ミュージアムでは、2018年7月7日(土)~9月16日(日)までの期間、「河井寛次郎ー過去が咲いてゐる今、未来の蕾で一杯な今」が開催されています。7月6日にプレス内覧会が開催されましたので、その様子をお伝えいたします。

 

その卓越した芸術性により、没後50年を超えてなお、国内外で高い評価を受ける陶芸家・河井寛次郎。
中国や朝鮮古磁器に範を求める釉薬の美しい作品をはじめ、木彫制作や家具調度のデザインなど、陶磁の垣根を超えて数々の独創的な作品を生み出しました。

 

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本展では、京都の自宅であった河井寛次郎記念館所蔵作品を中心に、本邦初公開となる陶芸や木彫、書、調度類などを紹介。寛次郎の仕事の全貌と、その魅力的な「言葉」に込められた精神性を辿ります。


それでは、会場風景と展示作品の中から一部をご紹介いたします。

 

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本展では「河井寛次郎の生み出したもの」と「河井寛次郎の愛したもの」という2つのセクションに分けて約130点の作品群が展示されています。さらにそれぞれが「土」「彫・デザイン」「言葉」と「学んだもの」「コレクション・遺愛品」「資料」に区分けされ、寛次郎の作品世界の全貌が理解できるように構成されています。

 

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「薬の河井」と呼ばれたほど釉薬にこだわった寛次郎。鮮やかなコバルトの発色が美しい

河井寛次郎が生涯をかけて向きあったのが「土」、陶器です。

島根県安来市に生まれた寛次郎は中学時代に陶器の道へ進むことを決意し、東京高等工業学校窯業科へ進学。ここで身につけた陶磁器における科学的基礎が、のちの寛次郎陶業において大輪の花を咲かせることになります。

「土」のコーナーでは、中国や朝鮮の古磁器に倣った初期、民藝運動と連動した「用の美」の中期、そして戦後の自由な創作世界の後期の3つのスタイルの作品群を一挙に展観し、その業績を辿ります。

 

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こちらは、その独特な形状が魅力的な『三色打薬双頭扁壺』。河井寛次郎の代表作とされる陶磁器のひとつです。「扁壺」とは古代から世界各地に見られた酒壺のことで、その名の通りどこか偏った形状が特徴です。
「まるで親子のように見える」とは、本展監修者の鷺珠江さんの弁。どこかユニークで温かみのある表情に癒されますね。

とにかく「形」にこだわったという河井寛次郎。いわゆるろくろ成形のものよりは、石膏の型による扁壺の作品をこよなく愛したそうです。

 

彫・デザイン

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時として「表現者」と呼ばれる寛次郎は、陶器以外にも多くの仕事を残しています。

47歳の時に自邸を自ら設計、さらに多くの家具調度をデザインした寛次郎は、建築時の余材を使って数体の木彫を制作したことがキッカケで多くの木彫作品を制作するようになりました。その作品の多くは「木彫像」「木彫面」とのみ称し、その解釈はすべて私たちに委ねられています。

「彫・デザイン」のコーナーでは、精魂込めて制作された寛次郎の木彫造形の数々が展示されています。

 

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左は猫の木彫像。一人娘の須也子が飼い猫「熊助」がいなくなって悲しみに暮れているのを見て、寛次郎が掘り出したものだそうです。寛次郎の娘に対する深い慈愛が感じられる作品ですね。

最初は「こんなの熊助じゃない」と泣いていたという須也子さんですが、その時に寛次郎は「猫の生命体はなくならないから、心配しなくていいよ」と語ったそうで、大きくなってからもその言葉はずっと覚えていたそうです。

 

言葉

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河井寛次郎は、その「言葉」においても人々を魅了し続けてきた作家です。

「助からないと思っても助かって居る」

この言葉は将棋の大山康晴名人が座右の銘としていたそうですが、窮した時、落ち込んだ時、人々は寛次郎のこうした飾らない言葉の中に救いを見出してきたのしょう。

「言葉」のコーナーでは、ものづくりを生業とした寛次郎が残した珠玉の文章や言葉が紹介されています。こうした短い詩句の数々は58歳の時に『いのちの窓』という一冊の本にまとめられ、刊行後もさらに新たな語句が生み出されていきました。

 

河井寛次郎の愛したもの

寛次郎がこよなく愛したという「庭の丸石」

寛次郎がこよなく愛したという「庭の丸石」。こちらはレプリカ

 

「これしかない」という「用の美」の究極を表現したという釣り鐘火鉢

「これしかない」という「用の美」の究極を備えた釣り鐘火鉢。あまりの見事さに寛次郎は感激して泣いたという

 

寛次郎の愛用品の数々。庭の丸石のような「円」「球」をモチーフにしたものが多い

寛次郎の愛用品の数々。庭の丸石のような「円」「球」をモチーフにしたものが多い

展覧会終盤の「河井寛次郎が愛したもの」では、「学んだもの」「コレクション・遺愛品」「資料」というセクションで寛次郎の創作の手本となった作品や愛用品などを展観し、より立体的に寛次郎の人となりを紹介しています。

 

パナソニックの創業者、松下幸之助が寛次郎に贈ったトランジスタラジオ

パナソニックの創業者・松下幸之助が寛次郎に贈ったトランジスタラジオ

そして展覧会の最後には、パナソニックの創業者松下幸之助が寛次郎を文化勲章に推薦した際に贈った当時最新のトランジスタラジオ「パナペット(Rー8)」が最後に特別出品されています。寛次郎は文化勲章は辞退しながらもこのラジオは喜んで受け取ったそうですが、こういうエピソードにも寛次郎「らしさ」がよく現れていますね。


展示解説をおこなう鷺珠江氏

展示解説をおこなう鷺珠江氏

「寛次郎は、ものに向き合うのですが、ものに執着がないのです。そこが、私がいつも『すごいな』と思う点ですね。人は何も持たずに生まれ、何も持たずに亡くなっていく。それが一番よくわかっていながら、生きている間は徹底してものと向き合っていたんです」
本展監修者にして寛次郎のお孫さんにあたる鷺珠江さんは、展示解説の中でそのように語ってくださいました。

ものづくりを生業にし、また民藝運動を通じて多くの工芸品と出会ってきた河井寛次郎。「嫌いなものは側に置かない」とはっきり断言するなど、強いこだわりを持っていた反面、その一方では疎開先で所有品を惜しみもなく喜捨することもあったようです。

「寛次郎が亡くなって50年になりますが、こうしてみなさんに大切にしていただいていることが不思議で。人生は短くても芸術は永遠ということは、こういうことなんだなぁと思います」

 

会期は2018年7月7日(土)から9月16日(日)まで。
陶磁器、木彫、家具デザイン、そして言葉。
猫のように永遠に生き続ける河井寛次郎の芸術とその世界を、ぜひ会場でご堪能ください。

 

開催概要

展覧会名 河井寛次郎ー過去が咲いてゐる今、未来の蕾で一杯な今
会場 パナソニック汐留ミュージアム
会期 2018年7月7日(土)~9月16日(日)
休館日 水曜日
8月13日(月)〜15日(水)
時間 午前10時~午後6時
※入場は午後5時30分まで
料金 一般:1000円 65歳以上:900円 大学生:700円
中・高校生:500円 小学生以下:無料
URL  https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/18/180707/index.html

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