「白鶴錦 蔵元の集い 2018」取材しました

7月31日(火)、白鶴酒造株式会社によって独自開発酒米「白鶴錦」についての初の意見交換会「白鶴錦 蔵元の集い2018」が開催されました。
 

白鶴酒造株式会社 代表取締役社長 嘉納健二氏

白鶴酒造株式会社 代表取締役社長 嘉納健二氏


 
日本酒を造るうえで、米は水と並んでとても重要なものですが、元来米の品種改良等は国や県の公的機関が行うもので、酒造メーカーが自ら酒米(さかまい・日本酒醸造の原料になる米)を開発することはありませんでした。
 
しかし白鶴は日本酒に適した米の追求にこだわり自社で研究を続け、ついには「白鶴錦(はくつるにしき)」の誕生に至ります。
 
2007年に種名「白鶴錦」として農林水産省に品種登録受理されて以来、白鶴酒造にて「超特撰 白鶴 天空 純米大吟醸 白鶴錦」や「超特撰 白鶴 純米大吟醸 白鶴錦」といった高品位商品の酒米として使用されているほか、有力蔵元でも使用されています。
 
今回はさらなる酒質向上のため、これら9社の蔵元が初めて一堂に会して酒米としての白鶴錦の特徴と醸造適性について意見交換会がおこなわれました。
 

白鶴錦ができるまで



 
酒米の王者と言われる兵庫県産の「山田錦」があります。「母:山田穂」と「父:渡船」を掛け合わせて生まれた品種です。山田錦から造った大吟醸は最高品質の日本酒とされていますが、母親品種の山田穂のほうは背が高く倒れやすいという性質を持っていたために栽培が難しく、次第に生産されなくなりました。
 

ひときわ背の高い山田穂は、栽培時倒れやすいことから長らく生産が休止されていました

ひときわ背の高い山田穂は、栽培時倒れやすいことから長らく生産が休止されていました


 
白鶴酒造は山田錦を超える酒米を造るため研究を重ねていましたが、そこで着目したのが山田錦の母親品種である山田穂でした。1990年から山田穂の復活に取り掛かり、5年後には山田穂を用いた吟醸酒を醸造するまでに至ります。
 
このころ、白鶴酒造は復活させた山田穂を母親品種、そして渡船を父親品種として交配し、酒米の王者・山田錦の兄弟品種を開発しようという試みに着手します。
 
それから9年、品種選抜を繰り返し、そのうちの最高品質のものを白鶴錦と名付けて農林水産省に品種登録の申請をし、2007年に受理されます。
 

白鶴錦の特徴

 
白鶴錦と山田錦は兄弟米であるため、大粒でたんぱく含量が少ないという、酒米としての優良性質はよく似ているものの、醸造したのち山田錦に比べると、味わいがやわらかく感じられる特徴があります。
 
成分分析によるとアミノ酸や高級アルコールが少なく、酢酸エステルがやや多い傾向がみられるため、これらの要素があわさりやわらかく感じられるようです。
 

山田錦に比べ粒・心白(しんぱく)(米粒の中心にある白濁した部分)が大きい白鶴錦

山田錦に比べ粒・心白(しんぱく)(米粒の中心にある白濁した部分)が大きい白鶴錦


 
山田錦に比べ、背が低く倒れにくい

山田錦に比べ、背が低く倒れにくい


 
 
白鶴錦を使用した商品がずらりと並びます

白鶴錦を使用した商品がずらりと並びます


 
意見交換会の最後には、各蔵元によるきき酒が行われました

意見交換会の最後には、各蔵元によるきき酒が行われました


 
白鶴錦を使用したお酒は、雑味が少なくフルーティーな味わいが特徴です。
 


 
 
また、白鶴酒造は、銀座の自社ビル屋上の「白鶴銀座天空農園」にて白鶴錦を栽培。屋上緑化に取り組み、さらに近所の小学生を招いて体験学習を実施し食育の一環を担っています。
 
白鶴錦に興味を持たれた方は、「白鶴銀座天空農園」にて栽培した同種を使用して造られた日本酒を味わうことのできるセミナーが開催されていますので、参加してみてはいかがでしょうか。
 

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