●営業政策室 店舗運営部 担当統括マネジャー 逸見 明子さん
1993年入社。食器や婦人服などの売場を担当した後、2000年から本店の改装に携わり、改装後はキッチン売場を担当。2008年からはたまプラーザ店改装、二子玉川東急フードショーの開業に携わり、開業後は和洋菓子売場を担当した。2013年に店舗運営部へ異動。幅広い売場経験をいかし、現在は渋谷ヒカリエShinQsやHINKA RINKAを並行して担当する。
HINKA RINKAの売場環境づくりを担当された店舗運営部の逸見さんにお話を伺いました。どこを歩いてもキモチにフィットするようデザインされた『360°環境』や、環境コンセプトである『オムニバスシアター』の詳細まで、「どこかにある店」ではないHINKA RINKAの独創的な売場環境を紐解きます。
―― HINKA RINKAの環境づくりにおいて、特に意識したことを教えてください。
渋谷のような顧客基盤がないので、銀座の街において印象に残る個性的な空間にしなければということが大前提としてあり、MD同様、環境においても「イメージターゲットの高揚感」を第一に意識しました。
“オムニバスシアター”というコンセプトは、女性が買い物をするときの高揚感やキモチを想像し、舞台の幕が開いたときの「これからどんなお話が始まるんだろう」というワクワク感に似ているのではというところから着想しました。
さまざまなショートストーリーが展開するように、フロアを回遊すると次々に異なるシーンが連続する環境づくりを3層共通でおこない、3層でひとつのストアと感じていただけるようにこだわったのもポイントです。
―― “オムニバスシアター”ということですが、イメージされているシアターはあるのでしょうか?
どこの劇場というのはありませんが、外から見える部分は緞帳(どんちょう)の赤を基調にデザインしているので、緞帳のある上質な舞台を想定しています。幕が開いた瞬間に「わぁ~!」と高揚感を覚えるような感覚をイメージしました。
この緞帳の部分もそうですが、外へ魅力を発信するという工夫を大事にしていて、外から見て「あ
こに何があるんだろう?」と思ってもらえる面白さを出したいと考えました。
―― ご自身にとって銀座の街とはどういう印象でしょうか。環境面での店舗づくりにも、「銀座」というのは影響しているのでしょうか。
銀座という街はどこか特別感があります。環境づくりにおいては「イメージターゲットの高揚感」を最も意識しましたが、質感・グレード感については銀座という街が持つ特別感を意識したものになっていると思います。
―― 逸見さん個人としては、銀座の街とは縁があったのですか?
実は通っている美容室が銀座なんです。ずっと工事をしているのは見ていて、その物件を自分が担当することになるとはという驚きでした。月に1回は通っているのですが、銀座の美容室を訪れる人はおしゃれな方が多いので、「自分もおしゃれして行かなくては」という思いがあり、青山や表参道とはまた違うクラス感を感じていました。最近では海外からの旅行客も多くなってきたなど、雰囲気が変わってきたなと感じます。
―― HINKA RINKAの環境づくりを行う中で、ご苦労されたことやエピソードなどありますか。
外壁がガラスでできていたり、真ん中のエスカレーターでフロアが分断されたりという、一見マイナスな要素をどうプラスに変えていくか、という部分でしょうか。ですが、分かれているからこそ、角を曲がるたびに違う環境が見えてくるという表現ができましたし、逆の発想でラップ空間(※1)というアイデアも生まれました。
チャレンジという意味では、MDがあってそこから環境を作っていくのが従来のやり方だったのですが、HINKA RINKAでは全体コンセプトからMDと環境を同時進行で進めました。これは当社では
までにないお店の作り方だと思います。コンセプトとターゲットを創り出すところから始まり、 MD担当者とは何度もやりとりをしました。360°独自の環境というところに、個性の強いMDを展開する以上、多少の調整が必要でしたが、お取引先の皆さまがお店のコンセプトに共感してくださっているので、結果的には360°環境を実現できたと思っています。
―― MDと環境を同時進行で作ると、結果的にどのような変化があるのでしょうか?
MD担当も環境担当もお互いによく理解し合いながら作っているので、MDと環境がより響き合う店になると思います。その分1日中打ち合わせということもありましたし、やりとりは多かったです。
一番楽しみなのは、商品が並んだところですね。それを見て初めて違いが実感できるのかもしれません。
今後は“サービス”も含め、「MD・環境・サービス」の三位一体で進めていければと考えています。
―― 環境に関して見どころや、隠れた注目ポイントなどあれば教えてください。
MDチームは全体感と言っていましたが(LETTER vol.1より)、私もまさにそうだと思っています。
一番初めにお店に入った時や3層すべてを周った後に、どう感じてもらえるかというのがポイントだと考えています。角を曲がるごとに次から次へと新しいシーンに出会えるのも見どころですね。
細かい部分で言うと、フロア入り口のシーンAは今までの店では考えられなかった印象の強い環境になっているので、まずここで「わぁすごい!」と驚いてほしいです。フロアごとに雰囲気が異なり、3Fがレッド、4Fがブラック&ホワイト、5Fは個性豊かなショップ空間になっています。また、3FのシーンCは回廊(※2)を設けていて、商品を陳列する什器が鳥の巣箱の形になっていたり、引き出しだったり、イスを重ねていたりと、ディスプレイの仕方も見どころです。
【※2…回廊】3Fの天井高4mの壁際に位置する小物やアクセサリーなどを展示できるユニークなディスプレイ空間
―― 最後にHINKA RINKAには、この先どういうストアに育ってほしいですか。
具体的に「こうなってほしい」というのはありません。お店はオープンしてお客さまが入ってきて初
めて動き出すものだからです。実際にお客さまがいらっしゃると、思いがけない方向に変化したりすることがあります。我々が力を入れていたところではなく意外なところが注目されたり、良いと思っ
てもらえることもよくあります。
お客さまと一緒に成長しながら、それでいてお客さまの少し先を歩いていけるような店になっていってほしいと思います。
私は二子玉川の東急フードショーにも携わっていたのですが、開業の際、「ついに今まで檻の中で育てていた巨大な生き物を世に出してしまうんだ、扉を開けてしまうんだ」という気持ちになったんです。これまで自分たちでコントロールできていたものが、今日からは自分たちのものではなくなって、お客さまと育てていくんだ、という何とも言えない感覚になりました。
お客さまの「この店のここが好き!」というお声を聞いて、良いところを伸ばしていけたらと思います。