資生堂ギャラリー「荒木悠展 : LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲ」開催

2019
Bivalvia: Act I
installation view
PinchukArtCentre, Kyiv, Ukraine

 
資生堂ギャラリーでは、2019年4月3日(水)~6月23日(日)の期間、国際的に活躍する映像作家、荒木悠の新作による個展「荒木悠展 : LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲ」を開催します。
 
荒木悠は、昨年ロッテルダム国際映画祭でTiger Awardを受賞、2019年キエフのピンチューク・アートセンターで開催中のFuture Generation Art Prizeの最終候補となりました。世界各地での滞在制作などを通して、文化の伝播と誤訳、その過程で生じる差異や類似などに着目し、社会・歴史を背景にした映像作品を制作しています。
 
資生堂は、今年が資生堂ギャラリー創設100周年にあたり、2022年には創業150周年を迎えます。資生堂ギャラリーを設立した資生堂初代社長の福原信三は、経営者であり写真家でもありました。大学を卒業後、1908年から1913年までアメリカ、ヨーロッパに滞在し、西洋で学んだことを東洋の感性と融合させ、資生堂の経営や美意識の醸成に活かしました。また、写真家としては、独自の視点で外国を撮影した『巴里とセイヌ』『西湖風景』『布哇風景』などの写真集を残しています。
 
その少し前、ちょうど日本が急速に近代化・西洋化を進めていた明治期に日本を訪れ、紀行文を残したフランス人の作家がいました。荒木悠は、その作家、ピエール・ロティに着目し、彼の著作である『秋の日本』(Japoneries d’Automne, 1889)を作品の素材のひとつに選びました。ピエール・ロティ(Pierre Loti 1850-1923)は、海軍将校としてポリネシア、アフリカ、アジアなどに滞在し、さまざまな紀行文や小説を書き残しています。それらは、植民地政策で支配的立場にあったヨーロッパからのまなざしで描かれてはいるものの異文化に対する強い好奇心と憧れがあらわされており、『秋の日本』には美しい日本の自然や日本人の美意識を称賛する表現も多くみられます。
 
本展のメインとなる映像作品は、『秋の日本』のなかの「江戸の舞踏会」の章がベースになります。これは、明治18年に鹿鳴館で催された舞踏会を訪れたロティが、35歳の自身の視線でその様子を描いた見聞録です。これをもとに芥川龍之介が1920年に『舞踏会』を書いていますが、それは、舞踏会でロティのダンスの相手をした17歳の初々しい日本人女性が主人公です。映像では、このふたつを原作として東洋と西洋の「まなざし」がワルツを軸に同じ時空間のなかで交差する情景を作り出します。そしてもうひとつの映像作品は、『秋の日本』に収録されている「聖なる都・京都」「日光霊山」「江戸」の章でロティが記録した場所を荒木が撮影し、100年以上前と現在とのズレから、映像に写らない「風景」を描写することを試みます。
 
歴史のひとこまに異なる視点を重ねて作った今回の映像を、もし100年後の人々が見たならば、今度はその滑稽さに微笑んでしまうような時空を超えたお土産(souvenir)としてこの展覧会が成り立つことを目指します。東洋と西洋、ジェンダー、階層、世代、時代など、さまざまな差異の交錯が浮かび上がる今回の作品を通して、多文化共生を目指す現代社会においての「他者理解」や「寛容」について考えるきっかけとなりましたら幸いです。



 

プロフィール

荒木悠 あらきゆう(映像作家)
 
1985年山形市生まれ。東京都在住。2007年ワシントン大学サム・フォックス視覚芸術学部美術学科彫刻専攻を卒業。2010年東京芸術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修士課程修了。2013年スペイン・サンタンデールのボティン財団主催タシタ・ディーン・ワークショップに参加。2017-8年ゲスト・レジデントとして韓国光州の国立アジア文化殿堂およびオランダ・アムステルダムのライクスアカデミーに滞在。
 
近年の主な展覧会:国立国際美術館(大阪)、無人島プロダクション(東京)、岡山芸術交流2016(岡山)、横浜美術館ギャラリー1(横浜)、ジョアン・ミロ財団現代美術研究センター(バルセロナ)、ダラス・コンテンポラリー(ダラス)など国内外多数。映像作品はこれまでにBFIロンドン映画祭、オーバーハウゼン国際短編映画祭、Recontres Internationales Paris/Berlin、恵比寿映像祭、香港国際映画祭など多くの映画祭でも上映されている。2018年には短編《WRONG REVISION | 利未記異聞》と共同監督を務めた《Mountain Plain Mountain》の二作品が第47回ロッテルダム国際映画祭に正式招待され、後者はタイガー・アワードを受賞。2019年キエフのヴィクトル・ピンチューク財団主催の第5回フューチャー・ジェネレーション・アートプライズの最終候補に選出される。
 

2018
LOST HIGHWAY (Sweded)
installation view
Volvo Studio Aoyama, Tokyo


 

2012
ALMOST DOWN
installation view


 

「荒木悠展 : LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲ」開催概要

主催: 株式会社 資生堂
会期: 2019年4月3日(水)~6月23日(日)
会場: 資生堂ギャラリー
〒104-0061
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
Tel:03-3572-3901 Fax:03-3572-3951
平日 11:00~19:00 日曜・祝日 11:00~18:00
毎週月曜休(月曜日が祝日にあたる場合も休館)
入場無料
 

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