青木繁《海の幸》(1904)重要文化財
アーティゾン美術館では、2022年7月30日(土)~10月16日(日)までの期間、「生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎」が開催されています。開催に先立ってプレス内覧会が行われましたので、その様子をお伝えいたします。
日本の洋画が成熟へと向かう時代の流れのなかで、それぞれに独自の作風を探求した洋画家、青木繁(1882-1911)と坂本繁二郎(1882-1969)。ふたりはともに現在の福岡県久留米市に生まれ、同じ高等小学校で学び、同じ洋画塾で画家を志した同志でもあり、同時に互いに切磋琢磨しあうライバルでもありました。
生誕140年という記念すべき年に開催される「生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎」では、二人の特徴や関係をよく表す作品約250点を中心にすえ、それぞれの生涯をときに交差させながら「ふたつの旅」を紐解きます。
66年ぶりに邂逅する、ふたつの魂。
久留米在住の画家・森三美の洋画塾で学び、高校の同級生でもあった青木と坂本ですが、その後ふたりがたどった画家としての人生や作風は時に交わりつつも、時に対照的ともいえるものでした。
《海の幸》で華々しくデビューし、若くして注目されながらも、晩年は九州各地を放浪し、そのまま画壇に復帰できず短い生涯を終えた青木。一方青木から数年遅れてデビューした坂本は87歳で亡くなるまで長きにわたり、馬、静物、月などを画材に制作を続けました。
青木繁と坂本繁二郎、それぞれの回顧展は節目ごとに幾度も開催されてきましたが、二人を同時に取り上げた展覧展は 1956年に開かれた「青木繁・坂本繁二郎作品展覧会」(旧石橋美術館)以来66年ぶりとなります。同じ年に久留米で生まれた二人の画家の、これまでにあるようでなかった競演といえるでしょう。
本展は「出会い」「別れ」「旅立ち―坂本繁二郎」「交差する旅」の全四章構成となっており、鑑賞を進めていくことでふたりの生涯と画風、そしてその交流の足跡をたどることができます。
一足先に上京し東京美術学校(現東京藝術大学)に入学した青木の画力の上達に感化され、坂本は上京を決意しますが、《汗の妙義山スケッチ行》は上京後にふたりが妙義山に連れ立って写生旅行に行ったときの作品。他にも上京する際に青木が坂本を描いた絵なども展示され、当時のふたりの交友の様子を伺い知ることができます。
もともと青木は日本やインドの神々を描いた作品14点を白馬会展に出展してデビューしましたが、日本の神々はのちの主要な画題のひとつとなりました。そうした青木の古典文化への興味を窺わせる「仮面スケッチ」と呼ばれる作品群も見どころのひとつ。長らく非公開でしたが、このたび約40年ぶりにまとまって展示されます。
伎楽や舞楽などの仮面、さらにその後の時代に完成した能楽の仮面など、古来の神々の姿がどのように造形化されてきたかについて、青木の並々ならぬ関心が窺えます。
ともに画業を究めようと切磋琢磨していた青木と坂本。しかし、そんなふたりの分かれ道となったのが1907年に開催されていた東京勧業博覧会でした。
結果は、青木も坂本もともに三位入賞。しかし、青木の《わだつみのいろこの宮》は三位の中でも末席にとどまり、坂本の《大島の一部》は主席という評価。すでに画壇の寵児となっていた青木はこの結果に大きく落胆しますが、坂本にとっては画壇においてはじめて大きな栄誉を与えられた機会となりました。
青木が1911年に逝去した後も、坂本はパリ留学を経て画壇の重鎮として活躍。会場では月や馬、静物といったモチーフを中心に展開する作品が展示され、ますます画力を円熟させていった坂本の様子を知ることができます。
青木繁と坂本繁二郎。同じ時代に生き、ともに画業に励んだふたりの洋画家の魅力を堪能できる「生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎」。ぜひ会場に足を運んでご覧ください。
同時開催:「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 田園、家族、都市」(2022年7月20日[水] – 10月16日[日])
開催概要
展覧会名 | 生誕140年 ふたつの旅 青木繁×坂本繁二郎 |
会期 | 2022年7月30日[土] – 10月16日[日] (前期: 7月30日[土]- 9月11日[日]後期: 9月13日[火]- 10月16日[日] |
会場 | アーティゾン美術館 6・5階 展示室 |
開館時間 | 10:00ー18:00(9月23日を除く毎週金曜日は20:00まで) *入館は閉館の30分前まで |
休館日 | 月曜日(9月19日、10月10日は開館)、9月20日、10月11日 |
チケット料金 | ウェブ予約 1,600円 当日 1,800円 / 大学・専門・高校 無料(要予約)/ 障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名 無料(要予約)/ 中学生以下 無料(予約不要) 詳細は開催概要をご覧ください。 |
主催 | 公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館 |
公式ページ | https://www.artizon.museum/ |