街に出る。目的は、観劇や食事や買い物。この場合は、目指すお店はわりとはっきりしている。それとは別に、街歩きを楽しむということがある。いつも行くうちに、その街ではかならずここは行くというお店が出来てくる。
定点(店?)観測をしていると、いち早く新製品を手に入れられたり、お店お人と親しくなったりと、街歩きに楽しみが増すのだ。
銀座の場合、私は「趣味のお店巡り」というのを決めている。「天賞堂」で鉄道模型、「松屋」はデザインコレクション、「伊東屋」では何か文房具の新製品はないかな?とか。カメラの「ライカ」、「アップルストア」もかならず覗く。むかしはここに、おもちゃ屋「キンタロウ」、洋書も売っていた「近藤書店」もあったのだが、いまは閉店してしまった。
ここも移転してしまったが「松島眼鏡店」もかならず寄るお店だった。お店の入口上に、望遠鏡をのぞく男の木の看板があった。二階の「望遠鏡、双眼鏡売り場」で、あるとき見慣れぬ双眼鏡、それもとても小さい、なのにすごく高価、がショウケースの中にあるのをみつけた。「外科手術用の双眼鏡」だって。とくに必要はなさそうだったので、もちろん買いませんでしたが…。
銀座から移転していったお店には、カメラ屋さんも多い。「銀塩カメラ(フイルムのカメラ)」が「デジタルカメラ」に移行したことは、お店にも変化を及ぼした。カメラ用品の「銀一」や「レモン社」は他所に大きな店舗をつくったようだ。「中古カメラ」のお店も、むかしほどのにぎわいではなくなったみたいだ。
しかし銀座の老舗のお店が蓄積している知恵は、決して侮ることは出来ません。あるとき、ある医学的な治療のせいで、ワタシの頭髪が抜けてしまったことがある。予想できる現象だったので慌てず「帽子屋、老舗」で検索。そして見つけた銀座の「トラヤ」帽子店へ行った。「あなたのその現象は、治療が終われば、かならず回復します。でも、いまはご不自由でしょうから、お似合いの帽子を探しましょう」さすが銀座の老舗。安心まで売ってくれた。
変わっていくのはお店だけでなく、銀座の街もそうだ。数寄屋橋交差点や、松坂屋のあった5丁目の広い一角はいま工事中だ。街は時代に合わせて生まれ変わるものだ。銀座はこれからどんな街になるんだろう。どんなお店が出来るんだろう。とても楽しみだ。
蛇足。皇居の一角に今でも残る、江戸城の石垣に登ったことがある。東の方角、東京湾の手前に、銀座の町並みが見える。ここに今度、2020年の東京オリンピックまでに「江戸城天守閣」を再建するという計画があると新聞で読んだ。木造5階建て高さ59メートル。そこに登ると江戸の街、そして銀座の街がよーく見えるはずだ。とてもとても楽しみだ。