【アーティゾン美術館】「クロード・モネ ― 風景への問いかけ」報道発表会レポート

クロード・モネ《日傘の女性》 1886年 油彩、カンヴァス オルセー美術館蔵 Photo © RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) /Stéphane Maréchalle / distributed by AMF

 

2015年5月から休館していたブリジストン美術館が、「創造の体感」という新たなコンセプトのもとリニューアル。
今回は2020年1月18日に開館したばかりの「アーティゾン美術館」と、同館で開催される特別展「クロード・モネ ― 風景への問いかけ」の報道発表会の模様をお伝えいたします。

 

 

アーティゾン美術館とは?

 

23階建て高層ビル「ミュージアムタワー京橋」の低層部に位置する

 

1階エントランスロビー

 

2階のミュージアムショップ。高透過大型ガラスによって明るい空間が広がる

 

東京駅から徒歩1分圏内という一等地に建つアーティゾン美術館。



「ARTIZON」(アーティゾン)は、「ART」(アート)と「HORIZON」(ホライゾン:地平)を組み合わせた造語で、古美術、日本近代洋画、印象派、20世紀美術、そして現代美術までジャンル問わず、時代を切り拓いていくような「アート体験」を提供したいという意思が込められています。

 

現代的かつ人の温かみを感じさせる内装デザイン

 

1階・2階部分は吹き抜けで一体化

 

注目すべきは、チケット購入に日時指定予約制を取り入れている点。展覧会によってはあまりの混雑ぶりに「人の頭しか見えなかった」という状況がしばしば起こりますが、日時指定制であればその心配はありません。空きがある場合は当日の窓口販売もありますが、あらかじめ購入して向かったほうが良いでしょう。

また、最新の照明・空調設備による理想的な鑑賞環境の実現はもちろんのこと、チームラボによる「デジタル・コレクション・ウォール」やアプリによる作品解説など、先進的な試みの数々が導入されています。

 

 

満を持して開催!「クロード・モネ ― 風景への問いかけ」

 

 

自然の中の外光の美しさに魅了され、その探求と表現方法の追求に生涯を捧げたクロード・モネ(1840-1926)。本展では、ル・アーブル時代、アイルジャントゥイユ時代など、モネが各々の時代に残した足跡を追い、画業の終盤に手がけた睡蓮の連作にいたる過程を紹介。個々の作品に宿る連続性に注目します。

オルセー美術館主席学芸員・学芸部長のシルヴィー・パトリ氏が監修をつとめ、アーティゾン美術館とともに作り上げる本展は、オルセー美術館が誇るモネ作品とその関連作品96点にアーティゾン美術館をはじめとする国内の美術館や個人の所蔵品を加えた約140点を出品。風景画家としてのモネに迫ります。

 

 

展覧会の見どころ

 

1.

モネの画業を年代順に追い、風景画をどう革新したかに迫る!

本展覧会を監修したシルヴィー・パトリ氏

 

クロード・モネはその生涯を通じて様々な場所を訪れ、多様な方法で制作を行いました。本展ではモネの画業を年代別に追い、晩年の『睡蓮』へと繋がっていくテーマや技法を順を追って提示します。

 

2.

様々なジャンルの視覚表現と交錯させる、前例のない「新しい」モネの展覧会

エミール・ガレはモネと同様に「水辺の情景」を工芸品で表現しようと試みた

 

モネはしばしば自然を「ありのまま」に画布に留めた画家、と説明されます。しかしモネの風景画は、実は彼自身の幅広い視覚的・芸術的素養から育まれたものでした。本展では写真作品や浮世絵、工芸品など、様々なジャンルの視覚表現とモネの絵画を交錯させ、多角的にその画業を紹介します。

 

3.

オルセー美術館が誇るモネ・コレクションから選りすぐりの作品が来日

クロード・モネ《睡蓮》 1903年 油彩、カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館蔵

 

オルセー美術館が所蔵するモネの絵画作品は73点。これはモネの画家仲間ギュスターブ・カイユボットをはじめ、多くの人たちに寄贈されたもので、世界で最も重要かつ網羅的なコレクションのひとつです。今回はその中から日本初公開22点を含む選りすぐりの42点が来日します。

 

 

展示作品紹介

 

本展における展示作品の中から一部をご紹介します。

 

クロード・モネ《かささぎ》

1868~69年 油彩、カンヴァス オルセー美術館蔵
Photo © RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Adrien Didierjean / distributed by AMF

浮世絵のように、大胆に。繊細に。

モネは画家として生涯の中で何度も雪にインスピレーションを受けて作品を描いています。1869年に描かれた《かささぎ》では画面の随所に「白」という色における探求の成果があらわれており、また浮世絵の雪景と同様に、繊細な色彩の面を重ね合わせることによって見事に奥行きを表現しています。
モネが自然と風景に対するアプローチを日本の美術、特に浮世絵から学んだことはよく知られています。

 

クロード・モネ《サン=ラザール駅》

1877年 油彩、カンヴァス オルセー美術館蔵
Photo © RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Benoît Touchard / distributed by AMF

モネの好奇心を刺激した、現代生活の情景。

モネはパリのサン=ラザール駅の近代建築に興味を持ち、11点ないし12点の作品を制作しました。モネはそのうち8点を1877年の印象派展に出品しており、印象派の風景画における重要な要素をこの作品の中に見出していたことがうかがえます。モネはセーヌ河沿いの行楽地の情景を描くとともに、工業化が進展しつつある現代的側面にも着目していました。

 

クロード・モネ《ルーアン大聖堂、扉口、朝の陽光、青の調和》

1894年 油彩、カンヴァス オルセー美術館蔵  
Photo © RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Sylvie Chan-Liat / distributed by AMF

「時間」を描く。「光」を捉える。

1890年代になるとモネはポプラ並木や大聖堂など、同じテーマにもとづく連作を手がけるようになりました。1892年と翌93年、ルーアンに数週間滞在して手がけたルーアン大聖堂を主題にした作品は、のちに連作30点として結実します。これは朝の時間帯の大聖堂を描いたもので、他にも曇った日や晴れた日、夕方など、光の具合によって刻々と色彩が変化する様子が描かれました。

 

開催概要

展覧会名
オルセー美術館・オランジュリー美術館特別企画「クロード・モネ ― 風景への問いかけ」
会 期 2020年7月11日(土) – 10月25日(日)*入館は閉館の30分前まで
10:00 – 18:00(毎週金曜日は 20:00 まで、但し7月24日を除く)*日時指定予約制
休館日 8月3日(月)、9月7日(月)、10月5日(月)
会場 アーティゾン美術館6・5階展示室
公式サイト https://www.artizon.museum/collection-museum/exhibition/detail/5

 

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