【パナソニック汐留美術館】ブダペスト国立工芸美術館名品展「ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ」(~12/9)内覧会レポート

パナソニック汐留美術館では、2021年10月9日(土)~12月19日(日)までの期間、ブダペスト国立工芸美術館名品展「ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ」が開催されています。10月8日にプレス内覧会が開催されましたので、その様子をお伝えいたします。

 

 

世界を旅した日本の「美意識」

 

展示会場入口

 

日本からヨーロッパに運ばれた浮世絵が印象派の画家たちに熱烈に支持され、影響を与えたことはよく知られていますが、東洋の工芸品もまた西洋にとって憧憬の的でした。

日本が開国した19世紀中ごろのヨーロッパ工芸は表面的に過去の様式をなぞることに終始し、どこか停滞したムードが漂っていました。しかし流入してきた日本の優れた工芸品に目をつけた芸術家たちはイメージの模倣から始め、日本の装飾技法の研究を通じ、その魅力の根底にある自然観や素材自体の効果を学んでいったのです。

やがてその探求は比類なきアール・ヌーヴォー様式へと結実することになりますが、「ジャポニスムからアール・ヌーヴォーへ」ではその様相を多数の優れた作例によって紹介します。

 

展示会場風景



 

会場の最初のセクションではジャポニスムの影響を受けた初期の作品が並ぶ

 

鮮やかなクチナシ色の花器。ジャポニズムは釉薬や顔料など、装飾手法においても大きな影響を与えた

 

みずみずしい草花の図像が大胆に取り入れられた作品の数々

 

エミール・ガレ、ドーム兄弟・・・至高のコレクションが多数出品!

 

エミール・ガレ 《蜻蛉文花器》。蜻蛉は武士の象徴でもあり、命の儚さをあらわすとされる

 

ハンガリアン・アール・ヌーヴォーにおいて重要な工房であるジョルナイ陶磁器製造所の作品

 

ルネ・ラリック 《ナーイアス図飾皿》

 

中東に起源を持つラスター彩で彩られた装飾瓶。花瓶の下側が紫と緑の光で輝いている

 

本展でその至高のコレクションを出品するのはブダペスト国立工芸美術館。1872年の創立以来古今東西の工芸品の収集にあたり、作家や工房からの直接購入の他にも1900年のパリ万博での購入など、同時代の名品を精力的に収集してきた美術館です。
本展ではブダペスト国立工芸美術館の陶磁器ガラス部門から、国際的にも名高いアール・ヌーヴォーのコレクションが展開。その数、約200点!

さらにハンガリアン・アール・ヌーヴォーにおいて大変重要な工房のひとつであるジョルナイ陶磁器製造所が制作した56点の作品も出品されます。とにかく会場をめぐって圧倒されるのは、ひとつひとつの作品のクオリティの高さ。
ジャポニスムとアール・ヌーヴォーの時期に焦点を当てた本展覧会から伝わってくるのは、当時作品作りに競い合っていたであろう作家たちの熱気そのものです。

特にラスター彩という技法を施されたジョルナイ陶磁器製造所の作品が放つ独特の輝きは必見。ライトアップも計算されており、その魅惑的な金属的な光沢が十分に堪能できるようになっています。

 

 

展示作品解説

 

《孔雀文花器》 ルイス・カンフォート・ティファニー 1898年以前

 

 

日本の芸術家の注意深い観察に基づく、正確でその特性が強調された生き物の動物や昆虫などの表現は、浮世絵や根付などの作品を通じてヨーロッパにおける生物の表現に大きな影響を与えました。

この《孔雀文花器》はコバルトブルーの表面に孔雀の羽根模様が描かれており、虹色光沢の色彩が特徴の特許技法ファブリルガラスで制作されています。表面の色合いが見る角度やライトの調子によって万華鏡のように変化するさまは非常に魅惑的です。

 

《葡萄新芽文花器》 ジョルナイ陶磁器製造所  1898-1899年

 

 

青・紫・緑・金色と、光沢のある金属的な輝きを放つ器表が映える大ぶりの花器。
器の表面に施されているのは「エオシン彩」で、ジョルナイの工房で施される全てのラスター彩はこのように呼ばれています。
玉虫のような表面のきらめきと写実的に描かれた深紅の葉が強いコントラストをなし、まるで秋の夜の月光のような日本的な情感を醸し出しています。

使用している素材や技法こそ違えど、何の予備知識もなしに鑑賞したら日本の陶芸作品だと思ってしまうのではないでしょうか。

 

《洋蘭文ティーセット》 ウッツシュナイダー社  1910年頃

 

 

アール・ヌーヴォーにはいわゆる植物的(フロレアル)アール・ヌーヴォーと幾何学的アール・ヌーヴォー(ユーゲントシュティール)があというふたつの潮流があるとされますが、このティーセットのデザインはこのふたつの要素を併せ持っています。

蘭の花で豪華に飾られたひとつひとつのアイテムにはきわめてエレガントで見事な絵付けがされており、背景に描かれた縞模様や格子模様にはまぎれもなく日本美術の影響を見て取ることができます。ぜひ直接足を運んで鑑賞されることをオススメします!

 

 

開催概要

会期 2021年10月9日(土)~12月19日(日)
会場 パナソニック汐留美術館
開館時間 午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
※11月5日(金)、12月3日(金)は夜間開館 午後8時まで(入館は午後7時30分まで)※日時指定予約可→予約サイト
休室日 水曜日 ただし11月3日は開館
観覧料 一般:1,000円、65歳以上:900円、大学生:700円、中・高校生:500円、小学生以下:無料
※障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料でご入館いただけます。
主催 パナソニック汐留美術館、毎日新聞社
公式ページ https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/21/211009/index.html

 

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