ソニービルが「銀座の公園」としてリニューアル!初公開された新施設「Ginza Sony Park」をレポート

 

2017年に解体開始された東京・銀座のソニービルが建て替えられ、新施設「Ginza Sony Park(銀座ソニーパーク)」として2024年8月に竣工を迎えました。これから細かな内装工事などを実施し、グランドオープンは2025年1月を予定しているとのこと。

このたびメディア初公開となる内覧ツアーに参加してきましたので、リニューアルしたビルの様子を紹介します。

 

Ginza Sony Park

 

1966年、数寄屋橋交差点に面する銀座の中心地で「街に開かれた施設」をコンセプトに建設されたソニービル。その角地には、ソニービルの創業者である盛田昭夫氏が「銀座の庭」と呼んだ10坪のパブリックスペースがあり、50年以上にわたり銀座の人々に親しまれてきました。

その「銀座の庭」という思想を継承・拡張させた「銀座の公園」として、人々が思い思いに過ごせる“余白”と、体験型のプログラムや飲食などさまざまな“アクティビティ”を提供し、街や人に新たなリズムをもたらす場所を目指して「Ginza Sony Park プロジェクト」が始動。

 

「Ginza Sony Parkプロジェクト」では2つのフェーズを経てビルをリニューアル。

 

2017年から解体がスタートしましたが、「建て替えプロセスもソニーらしくユニークに行いたい」との思いから、2018年8月~2021年9月までは解体途中のビルを公園にするという実験的な試みを展開。QUEENやYOASOBI、King Gnuなど人気アーティストとのコラボ企画をはじめ、ローラースケート場をつくるなど、驚きや遊び心が感じられる多様なイベントやライブなどのプログラムが実施されたのも記憶に新しいところです。

閉園までの約3年間で、じつに854万人もの動員を記録。それまでソニーの製品やサービスに意識して触れたことのなかった若年層にとっての“マイ・ファースト・ソニー”の体験を提供する場ともなりました。



このたび竣工を迎えたGinza Sony Parkのビルは地上5階(5階は屋上)・地下4階(地下4階は機械室など)建て、高さ33.86m、延床面積4390.39㎡。旧ソニービルが地上8階・地下5階だったことを考えると幾分コンパクトになり、銀座の標準的な建物と比較してもあえて低く構えているのが特徴です。

 

中央がGinza Sony Park

 

ビルを低層にした理由について、本プロジェクトの主宰であるソニー企業株式会社 代表取締役社長兼チーフブランディングオフィサーの永野大輔氏は次のように話します。

「Ginza Sony Parkが大事にしている公園の定義は“余白とアクティビティ”。建物内はもちろん都市の中にも余白を加えながら、ソニーらしい体験ができる公園を作り上げることが重要だと考えました。銀座はビルディングが多く集積率が高いため、あえて低層ビルを建てることで、数寄屋橋交差点の一角という銀座の一等地に余白を生み出しました」(永野氏)

 

1階フロア

 

建物の中に入ると、“公園”というコンセプトがよく伝わってきます。個性的なのは、旧ソニービル時代の螺旋状にフロアを配置した「花びら構造」と呼ばれるスキップフロアをオマージュしたという螺旋階段。地上の各階はゆるやかに外部空間へ開かれ、地下3階から屋上まで建物全体をつなげる一本のプロムナードをつくり出しています。

 

2階フロアから見下ろした風景

 

数寄屋橋交差点からスロープ、螺旋階段とシームレスに導線を接続。歩行者は数寄屋橋交差点、ソニー通り、晴海通りの三方から吹き抜ける心地よい風を感じながら階段を使って自由に周遊することができます。(建物内にはエレベーターもあります)

 

5階フロア(屋上)

5階フロア(屋上)

 

異なる天井高をもつ各フロアは画一的ではないリズムをもたらし、屋上にたどり着いたとき、目の前に広がるのは銀座の空。隣接する東急プラザやメゾンエルメスの美しいビルを借景にした贅沢な空間です。ベンチスペースも設置されているので、交差点のせわしなさとは打って変わった、憩いのひとときを過ごせるでしょう。また、夜は照明が灯り、異なる雰囲気が楽しめるとのこと。

案内されて驚いたのは、旧ソニービル時代とは異なり、ソニー製品のショールームや外部のテナントは一切入れず、建物全体がすべてアクティビティの開催が可能なスペースとなる点です。

ソニーグループ、ソニーの事業個社・他社問わず、さまざまなアクティビティによって変化し続ける続ける空間を目指す一方で、「アクティビティのない期間は街の余白として、休憩したり待ち合わせしたりといった用途で利用してもらいたい。たまたま気になるアクティビティがやっていたら、ふらっと立ち寄ってもらえたら」と永野氏は話します。

 

3階、4階フロアは扉を閉めることでクローズドなアクティビティを開催することも可能。

 

建物はずいぶん無機質でプリミティブな印象を受けましたが、アクティビティによって壁や床を変えていくためにあえてプレーンな状態にしているのだと気づきました。

「Ginza Sony Parkは銀座では珍しい打ち放しコンクリート建築です。公園は文字通りパブリックの要素が強く、それは僕らにとって土木的ということ。高速道路とか陸橋とか、土木的なものってすべてコンクリート打ち放しで作られていますよね。そうしたイメージを意識して、公共建築のようなインターフェイスをもちたいなと考えてこのような建物になりました」(永野氏)

 

建物の躯体を覆うグリッド状のフレームは、アクティビティを展開する機能的なファサードであり、また設備増設時に配線や配管を通す共同溝などの役割も果たすもの。

フレームを通じて落ちる光が木漏れ日のような変化をもたらすとのこと。

 

なお、現在ソニーにはエレクトロニクス、ゲーム、音楽、映画、金融、半導体という6つの主要事業があります。旧ソニービルと同じく、Ginza Sony Parkがソニーブランドの発信拠点であることに変わりありませんが、アクティビティ自体はファッションやアート、飲食など、公園というプラットフォームに相応しいものであればジャンルやコンテンツを制限せず幅広く企画していくといいます。

また、約3年の公園運営の中で大小200を超えるアクティビティを展開した経験から、「特定のテーマ」×「アーティスト」×「テクノロジー」の組み合わせが、集客や高い満足度、ソニーのブランド価値の向上が見込める成功パターンであるとの手ごたえを感じたという永野氏。そうした成功パターンをブラッシュアップしながら、来年1月にグランドオープンするGinza Sony Parkのオープニングイベントを考えていると明かしました。

 

地下鉄コンコースとの接続部

 

地下フロアに関しては、現在も細かな工事が続いているため残念ながら撮影はできませんでした。

ただ、地上の三方が道路に面し、地下は地下鉄コンコースと地域最大級の地下駐車場に直結する、都市機能と建物を有機的に結びつける「ジャンクション建築」が旧ソニービルから継承されているのを確認。そうした構造上の問題から地下部分はリノベーションに近く、地下鉄コンコース接続部には、梁や柱、50年以上前の青タイル壁など、かつてのソニービルの躯体の一部や面影が残されています。 そして地下3階には、旧ソニービルの上部で輝いていた「Sony」のネオンも象徴的に設置。

進化と同時に積層された建物の歴史は、ぜひグランドオープンのあとに見つけてみてください。

 


 

永野氏の印象深かった話として、2018年からの3年間にアクティビティを展開する中で、その実験的な取り組みについて来場者にアンケートをとったところ、最初の1年はソニー製品を展示・販売していないにもかかわらず、その期間も含めて「ソニーらしい」と回答する人が非常に多かったといいます。

「銀座の一等地を公園にして開放すること自体、人がやらないこと。それがソニーらしいよね、と。製品がなくても、来場者はソニーのブランドを体感してくれている。根っこの部分がソニーだから、その上でなにをやってもソニーなんだなと自信がもてました。ハード(建物)は完成したので、これからはソフトをどうしていくかを考えていきます」(永野氏)

「ひとのやらないことに挑戦する姿勢」「ユニークであること」――そんなソニーらしさの“今”を体現すると同時に、「街に開かれた施設」というソニービルの設計思想と創業者の想いを継承・拡張させ、余白とアクティビティで街や人々に新しいリズムをもたらす場としてオープンするGinza Sony Park。来場者とのブランドコミュニケーションを実践するプラットフォームが、この先どのように進化していくのか注目です。

 

「Ginza Sony Park プロジェクト展」

 

なお、数寄屋橋交差点下の西銀座駐車場にあるイベントスペース「Sony Park Mini」では「Ginza Sony Park プロジェクト展」が開催中。旧ソニービルからGinza Sony Parkへと変わる1050日間の新築工事の記録を映像や写真で紹介しています。会期は9月29日(日)までとなっているので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください。

 

■「Ginza Sony Park」概要

名称 Ginza Sony Park(銀座ソニーパーク)
所在地 東京都中央区銀座5丁目3番1号
フロア構成 地上5階、地下4階 ※ 地下4階は機械室など
敷地面積 707.42㎡
延床面積 4,390.39㎡
高さ 33.86m
設計 Ginza Sony Park Project
竣工日 2024年8月15日
公式サイト https://www.sonypark.com/

※本記事の内容は取材時点のものです。最新の情報と異なる場合がありますので、詳細は公式サイトをご確認ください。

 

 

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