江戸時代から続く”金魚鑑賞“という文化を、光・音楽・香りで彩られたモダンアートで楽しめる常設展「アートアクアリウム美術館 GINZA」(銀座三越8階)。
現在は生い茂る青紅葉や風鈴など、夏の風情を涼やかに感じられる特別企画「夏のアートアクアリウム展2023~銀座の金魚~」が開催中(2023年9月26日まで)で、この夏のお出かけにぴったりなスポットとなっています。
同展については約1年前、2022年5月のオープン時に一度取材しましたが、この特別企画の開催にあわせて館内最大級の作品「天空リウム」を含む新作水槽が5作品も登場したというので、あらためて足を運んでみることに。
オープン時と比較すると水槽作品がほぼ倍増!
金魚の種類も約60種類から約100種類に増えるなど、ずいぶん華やかになっていました。最新の展示の様子をレポートします。
※オープン時の取材記事はこちら⇒【会場レポ】「アートアクアリウム美術館 GINZA」が銀座三越にオープン!金魚が舞う幻想的なアート空間が広がる
幻想の美、伝統美…さまざまな美のかたちで金魚を彩る5件の新作水槽
今回お披露目された5件の新作「天空リウム」「手毬リウム」「金魚の石灯籠」「新行燈リウム」「猪目リウム」の中で、とくに存在感を示していたのは大作「天空リウム」です。
中央の大きな水槽を囲むように小さな水槽が配された構造は、同展が日本橋で開催されていた時代にあった目玉展示「大奥」に似ていますが、「天空リウム」が表現しているのは“天空に咲き誇る空想の花”。
石灯籠や提灯など、日本の伝統美を作品に昇華したものが勢ぞろいする同展のなかでも異彩を放つ、来場者をいっそう非日常の世界へ浸らせてくれる神秘的で豪華絢爛な姿が魅力です。
青、赤、黄、橙、緑、紫……次々に照明が変化するなか、花から滴り落ちる水のきらめきと優雅に尾を翻す金魚の美しさに見入りました。
日本の伝統的遊具である毛毬をモチーフにした「手毬リウム」も非常に華やか。多彩な糸で幾何学模様に織られた大小18個の手毬水槽が、リズミカルな配置で壁面を飾っています。美しい紋様の合間から覗く金魚というのも趣深いもの。
同展ではテレビアニメ『ポケットモンスター』の音楽担当に抜擢されるなど高い人気を誇る作曲家・コーニッシュ氏によるオリジナル楽曲が流れていますが、今回「天空リウム」と「手毬リウム」の展示エリアでも新作を発表。儚くも生命力を感じる楽曲演出で没入感を高めています。
「金魚の滝」の前方2か所に置かれた「金魚の石灯籠」は、幽玄の世界をさらに強固なものにしています。
「金魚の滝」は波打ちながら重層的に連なる水槽で滝を表現した、オープン時から存在する人気の空間型作品。担当者に話をうかがうと「館内(室内)にありながら、さらに自然の広がりを感じられるような空間演出にしたい」との思いから、神社仏閣の参道など屋外で灯りをともす石灯籠をモチーフにした作品を追加するかたちで設置したとのことでした。
「金魚の石灯籠」には国産石である御影石を使用。灯籠の火袋部分が水槽になっていて、そのなかを泳ぐ真っ赤な金魚がまるで揺らめく炎のように映りました。
行燈をモチーフにした「新行燈リウム」や、日本で昔から魔除けや福を招く意味合いで使われている文様、猪目(いのめ)の窓をモチーフした「猪目リウム」は、仄明るく静かな佇まいで来場者を魅了します。
とくに「猪目リウム」はかわいらしいハート型で、背景には「天空リウム」の華やかな水槽もチラリと写り込みますので、フォトスポットとしても活躍すること間違いなしです。
また、今回新登場した水槽作品ではありませんが、オープン以降に追加された「障子リウム」と「金魚の棚飾り」についてもご紹介しておきます。
“雪見障子”という戸枠の一部がガラスになっている障子をイメージした「障子リウム」は、金魚が舞い泳ぐ様子を見ながら日本庭園を思わせる風情を感じられる作品。カラフルにライトアップされている水槽が多いなか、あえて渋いモノトーンで抑えられているのが目を引きます。
「金魚の飾り棚」では、日本の伝統工芸である江戸切子を水槽として金魚を泳がせ、その周りを盆栽で飾っています。江戸切子は”工芸から藝術へ”をテーマに活動する気鋭作家・根本幸昇氏の手によるもの。気品ある繊細なカットが金魚が動くたびにキラキラと輝く様子にうっとりしました。
夏の装いで猛暑も涼やかに
同展では季節ごとにさまざまな趣向を凝らして来場者を楽しませていますが、現在は夏の特別企画の演出として館内全体が夏の装いになっています。
先ほども紹介した「金魚の滝」の上部には緑色の青紅葉が生い茂り、実際に水が流れるせせらぎの音とともに夏の自然の景色をつくり出しています。遠目には水の滴る水槽がまるで氷の塊のようだなと感じ、見ているだけでひんやりとした心地に。
提灯に見立てた球体の水槽が小道のように並ぶ約10mの空間型作品「提灯リウム」にはたくさんの風鈴が吊るされ、夏らしさ全開でした。
また、個性豊かな金魚の色柄や模様の美しさを、背の低い四角形の水槽の上からも横からも間近で堪能できる「新金魚品評」は、夏らしく爽やかな色合いの蓮の花が彩っています。
同展の水槽は、中になんという名前の金魚が入っているのかわからないものも多いのですが、こちらは「ミューズ」「桜琉金」など1基1基で名前が明記されているのがうれしいポイント。
近づくと金魚が水面まで顔をのぞかせてくれたり、じっと見つめ合ってくれたりなど、さまざまな仕草を披露してくれて、かわいらしい蓮と合わせて大いに癒されました。
ちなみに、同展には天然記念物に指定されているという4種の金魚、「土佐錦」「南京」「鉄魚」「地金」もすべて揃っています。「新金魚品評」では「鉄魚」を除いた3種類が泳いでいて、なかでも「土佐錦」は”金魚の女王”と称され、ドレスのように優雅に広がる尾が非常に麗しいので、来場の際はぜひ探してみていただきたいです。
生け花×金魚の相乗される美が楽しめる、華道家・假屋崎省吾氏とのコラボレーション作品「フラワーリウム」では、夏を象徴する鮮やかなひまわりが交わり、来場者にパワーを与えるかのようでした。
いっそう華やかに進化した『アートアクアリウム美術館 GINZA』
そのほか、「金魚の回廊」「金魚蒐集」「オリガミリウム」「金魚の竹林」を加えた合計15件の水槽作品(水槽は約150基、金魚の総数は約5000匹)が展示されることになった同展。オープン時には8件だけだったので、約2倍に増えたかたちです。
お話を伺うと、オープン時から無くなったものは「円窓デジタリウム」という撮影スポットだけとのことで、より濃密な鑑賞体験ができる展覧会に進化していました。
そのほか、お面や浮世絵など、日本の美そのものを鑑賞できるこだわりの展示や、日本を代表する老舗店やクリエイターとのコラボ商品など、ここでしか手に入らないオリジナルグッズの販売も。
筆者の場合、ゆっくりと巡って所要時間は1時間ほど。会場のスペースとしてはそこまで広くないのですが、密度が高い充実した時間を過ごせるスポットになったと感じました。
都会の喧騒から抜け出し、スケールアップした幻想的なアート空間へ。この夏はぜひ、王道から珍しい品種まで多彩な金魚が舞う、進化した「アートアクアリウム美術館 GINZA」へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
■「アートアクアリウム美術館 GINZA」概要
入場料 | WEBチケット 2,300円 https://ticket.artaquarium.jp/ 当日券 2,500円(当日券は銀座三越新館9階にて発売) |
所在地 | 銀座三越新館8階(入口は9階)(東京都中央区銀座4-6-16) |
営業時間 | 10:00~19:00(変更になる場合があります) |
休館日 | 銀座三越の休館日に準ずる ※メンテナンス等により不定期で休館の場合があります。詳しくは公式サイトをご確認ください。 |
注意事項 | ・ベビーカー、スーツケースの持ち込み、ペットを連れての入場はできません。 ・お荷物用のロッカーはございません。 |
公式サイト | http://artaquarium.jp/ |
公式SNS | Instagram https://www.instagram.com/artaquarium_tm_official/ Twitter https://twitter.com/artaquarium_tm Facebook https://www.facebook.com/artaquariumofficial |
主催 | 株式会社AQUA ART RELATIONS |
※本記事の内容は取材時点(2023年6月29日)のものです。最新の情報と異なる場合がありますので、詳細は公式サイト等をご確認ください。
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